羊田六色のブログ

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好きな文庫好きだ

 今日もコメダへ推敲しに行った。新商品のピスタチオ・シロノワールが美味しそうでヨダレがでた。しかし、推敲をするにはシロノワールの皿は大きすぎる。テーブルに原稿を広げられなくなってしまう。だから、我慢した。この小説を投稿したら、文庫を片手に食べに行くから待っていろよ。

 僕は文庫が好きだ。持ち歩きしやすいし、軽いので長く持っていられる。当たり外れが穏やかなのもまた良い。巻末の批評も好きだ。映画のエンドロールみたいに小説の余韻を楽しむことができる。

 一番好きな文庫は新潮文庫志賀直哉小僧の神様/城の崎にて」だ。志賀直哉は短編を多く書いた小説家で、この文庫はその短編集になる。「盲亀浮木」が収録されていないことだけが不満だが、志賀直哉の文章ににじみ出るユニークさをこの文庫を読めば楽しめる。収録作品の中だと「城の崎にて」がやはり面白い。動物と作者の交流、つまりは、自然と作者の交流がしっとりゆるやかな筆致で描かれている。また、スペイン風邪の流行が書かれている「流行感冒」は今読むと面白い。これはコロナが流行ている今だからできる読み方ができるはずだ。

 少し前に出た「コンビニ人間」は単行本も文庫も持っている。芥川賞を取ったときに読んで、衝撃を受けた。普通の生活ってなんて気持ち悪いんだろう、と。村田沙耶香さんの小説はこの言葉を言わせようとしている感じがする。それなのに、全てが新しい。それは見かけではなく、気持ち悪さの分析を一歩一歩進めており、その成果でもって常に新しい気持ち悪さを下地にしているからだろう。

 森見登美彦の「新釈・走れメロス」も良い。5つの短編からなる文庫だ。この中で一番を選ぶなら題名にもなっている「走れメロス」だ。森見登美彦がよく書いている、捻じれた京大生の捻じれた青春が笑いとともに楽しめる。

 この世には面白い小説がたくさんある。だが、読むことができる自分は一人だ。そのおかげで積読が貯まってしまう。しかし、積読は健康に良いのでみんなもどんどんやろう。